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慢性肝炎(23歳男性)

患者 23歳男性

初診日 昭和63年9月24日

既往歴 昭和41年4月5日。東京○○医大で先天性心室中間欠乏症と診断。その後1年に1回診察。
昭和45年12月3日~10日まで。同大学病院に心臓カテーテル検査の為入院。
その結果、激しい運動のみ制限。その後1年に1度の診察を受けていた。
昭和62年9月14日の診察の結果、バルサルバ洞動脈瘤の破裂を併発している事が判明。
至急入院して心臓カテーテル検査を行う。入院中急性腸炎を発病。
同病院で半年待たないと手術の順番が回ってこないと言われ、卒業試験や就職に間に合うように、また肝炎になると困るので輸血しなくて手術ができないものか担当医に相談したところ某病院を紹介してもらう。
昭和62年11月13日に心臓カテーテル検査を行う。
12月1日に寝室中隔欠損症とバルサルバ洞動脈瘤の破裂による心臓機能障害のための手術を行う。
12月14日に肝炎と診断される。GOT450、GPT575。一進一退を続けて4月14日までに同病院に入院してステロイド治療を受ける。
ところが2月26日病院内を少し動いたためかGOT215、GPT491。5月2日から9月20まで3回の入院。その間、1泊2日外泊してくると検査結果が悪い。そのため外泊が怖くなってくる。
当病院に来診する前に検査を受けてくるが、その結果、GOT242、GPT488、aLP216、LDH409、γ・GPT59であった。
母親の話しによると、輸血はしていないが止血製剤のヒブリノーゲンを使用。これが肝炎の原因らしいとの担当医の話しであった。患者は見るからに神経質そうで、顔色も悪く、気の毒なくらいであった。
そのため母親は検査の結果は秘密にしてほしいとの事。

症状 主訴は、時々、手・足に痒みがある。

健康状態 食欲は正常。小便は回数が多い。大便は1日1回。
診察してみると、脈は沈でも弱くもない。舌は少し乾燥気味。
血圧123/73 脈拍は72。
望診では、顔にカルブンケルが著名であった。

経過

9月24日(来院時)
漢方として、荊芥連翹湯加柴胡・天草を処方する。
(柴胡・天草は分量を増した)
それと、運動を毎日やるように命じておいたが、患者は「どうしてもいやである」と言う。
良く患者の話しを聞くと、これまでの外泊を許可されて、少し動くだけであったが、その結果、検査の数値が上がるという。
そこで患者を紹介した人も、同病院に入院していたのだが、漢方薬に運動療法を加えて治したことを話して、「少し汗をかくぐらいに運動を毎日しなさい」と言って患者自身は納得しないが帰ってもらった。

10月8日
特別に変化はなし。
血圧113/63mmHg。脈拍62。

10月22日
昨日寝る前に少し疲れた。とのこと。
血圧112/58mmHg。脈拍61。

11月5日
調子は順調とのこと。
驚いたことに毎日縄跳びを行い、テニスラケットの素振りを行っている。
母親が患者に内緒で10月31日の検査結果を手渡す。その結果はGOT172、GPT328、aLP183、LDH399、γ・GPT97

11月19日
患者はすこぶる快調であると言って運動療法が正しかったと主張するほどであった。

12月3日
相変わらず快調であると言う。毎日テニスを30分。散歩を1時間半ほどすると、母親が患者に内緒で11月16日の検査結果を手渡した。
GOT23、GPT26、aLP146、LDH301、γ・GPT29であった。
良かったですね。と母親に言うと「どうもありがとうございます」と言って実は息子が昨日、主治医に呼ばれて「完治しましたね。良く絶対安静にしていたね」と言われた瞬間、頭が逆上して、先生に喰ってかかろうとしたが、震える手をおろした。とのこと。
そこで「とにかく、病気が治れば何をしても良いと言うのではなく、今後自分自身が気を付けて下さい」と伝えた。

今回のケースは、安静を必要とするのは一般的に言って常識であるが、あまり長い経過のものには反対であると思う。
本症例に使用した荊芥連翹湯は、一貫堂医学における、解毒証体質の青年期に使用することになっている。学生時代、先師故木村佐京先生より、本方の特有な腹症を教えていただいたことがあった。
本方は周知のごとく、四物湯合黄連解毒湯に荊芥・連翹・防風・薄荷・枳穀・天草白★★★・桔梗・柴胡を加えたものである。臨床的には柴胡桂枝湯と腹証が類似しているので、慎重な診察を必要とする。ともかく、漢方は病名の如何に拘わらず、方意をあきらかにして、病人の体質を区別して、患者自身の言う症状を分析して総合的に漢方的にTPOを頭で整理して、漢方を決定してゆかなくてはいけないと思う。