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関節リウマチで、ブシラミンの効果不十分な症例に苡仁湯加大黄で効果があったケース

【緒言】

関節リウマチは(RA)は骨軟骨を破壊する慢性多発性関節炎を特徴とし、QOLを低下させる。治療は進歩し、予後は改善しているが、抗リウマチ薬有効例においても効果が減弱すると、変更や追加を余儀なくされる。そこで漢方治療が有効であったRA症例を経験したので報告する。

【症例】

70歳女性

[主訴]右手指関節腫脹と疼痛

[現病歴]62歳RAと診断され、ブシラミン200mg/日を服用していた。関節変形が進み、エタネルセプト注射薬を勧められたが、注射への抵抗感と副作用が心配で、漢方治療を希望し来院となる。

[身体所見]右第2〜4指、左第3指の関節腫脹と疼痛、下肢浮腫を認める。血液検査CRP1.0mg/dL、MMP72.1ng/ml、抗CCP抗体240U/ml

[東洋医学的所見]体格中程度、眼瞼が浮腫む、手足は冷えず、高い湿度で痛みが悪化する、足底が浮腫み痛む、口渇あり、小便8回/日、舌は微白苔、舌下静脈怒張を認める。脈は沈弱。腹力は中等度、胸脇苦満、臍傍の圧痛を認める。

[経過]薏苡仁湯を32日間処方。腫れは和らぐが疼痛は続く。同方を28日間継続。体の浮腫みが消え、疼痛は時折痛む程度まで和らぐ。大便1回/2日間の為、大黄0.5gを加味したところ、痛みはほぼ消失。ブシラミン50㎎/日減量となる。同方を継続。CRP0.87mg/dl、MMP65.5ng/mlと改善傾向となる。

【考察】

薏苡仁湯は明医指掌が原典で「寒湿痺痛二薏苡仁湯」とあり、水滞による関節腫痛に用いることが多い。勿誤薬室方函口訣には「此方ハ麻黄加朮湯、麻黄杏仁薏苡甘草湯ノ一等重キ処ヘ用ユルナリ。其ノ他桂芍知母湯ノ症ニシテ附子ノ応ゼザル者二用イテ効アリ」とあり、麻黄加朮湯や麻杏薏甘湯よりも重症で、熱感、腫痛が去らず、慢性に移行しようとするのが目標である。本症例の関節腫脹と疼痛は水滞によるものと考え薏苡仁湯を処方した。症状は改善し、ブシラミン減量後も検査値の改善傾向を認めている。

【結語】

証を考えた漢方治療をリウマチの治療に積極的に取り入れる事が重要と思われる。