東洋堂医院は、糖尿病、胃腸疾患、便秘、痔、肝臓疾患、アレルギー体質(花粉症、喘息、アトピー)、不妊症、婦人科疾患、にきび、皮膚疾患、リウマチ、各種癌、慢性疲労、
冷え性などでお悩みの方が(「患者層」を読む)、日本各地から来院される漢方専門の医院です。

HOME » 症例別臨床録 » 不妊症 » 不妊症に悩む婦人

不妊症に悩む婦人

ある年の8月の末頃、1人の婦人が当院に治療を求めて来院した。
この婦人の両親は、父親時代からの患者さんで子供の頃よりの顔見知りであった。
本人の語るところに依れば「自分は学校に勤める職業婦人で4年前に結婚したが今だに妊娠したことが無い」ということであった。
生理は順調であるが、基礎体温は不安定である。又、冷え症である。食欲・大便などは普段と変わりはなく、体型もほぼ普通である。
診察してみると、脈診は沈で少し弱い感じを受ける。舌を診ると特別な変化は認められない。腹証は瘀血を認める。
そこで、漢方は、当帰芍薬散科合桂茯丸料を投与した。

その後は仕事の関係か、投薬ばかりであったが、翌年の4月下旬に来院し「お陰様であの薬を飲んで1週間目頃より冷え症が無くなり、何となく体が温まって、生理も無くなったのでもしかしたら妊娠したのではないかと思い産婦人科に行ったところ「妊娠ですよ」と言われ嬉しくてたまらない。と言うことであった。

考えてみれば、世の中には結婚をしたのに、妊娠しなくて悩まれているご夫婦の多い事に驚くのは私ばかりではない。
誠に哀れむべき事態なのである。
昔は不妊症の婦人を診るとパートに来てもらい、薬を服用してもらったところ7~8人は妊娠して無事出産した。

その時の漢方は1人は通導散であった。この婦人も11年間、ただの1度も妊娠したことのない女丈夫であった。
仕事は非常に熱心にやり、当医院に5年間勤めてくれた。その間1日も休まずに服薬していたところ30の半ばを過ぎるころ思いもかけない妊娠であった。その喜びは大変なもので、子供のためにとアパートから一戸建ての家屋を買ったほどであった。そして男児を無事に出産した。

思い出すところによると、他の1人は半夏厚朴湯である。
この婦人も結婚して3年間、子供は欲しいがなかなか妊娠しなくてパートをしてもらった。
ところがこの婦人の場合は半年もたたないうちに妊娠をしてしまい、次が見つかるまでは頑張ります。
と言うことであったが、産み月の1ヶ月前まで頑張ってくれて無事出産した。
この婦人の場合も半夏厚朴湯で気のめぐりをよくしたため、妊娠したものであろう。

又、今一人は調胃承気湯を投与して妊娠した例であった。
この婦人の場合は比較的実証であったが、ご主人が忙しい人であったので婦人の方はいくら焦ってもどうにもならず結果として気苦労があったと思われた。
そこで腹証によって調胃承気湯を投与した所、5年間妊娠しなかったこの人にも子供が授かった。

その他の人々に出した漢方は、温経湯・小柴胡湯などであったと記憶している。

現代医学では「不妊症」と一括しているが、東洋医学においては症例で述べた様に、同じ漢方はなかった。
考えてみれば、これは当然の事で、同じ体質・同じ病像などと言うものは考えられず、その病院が現すありとあらゆる事を考慮して証を決定してゆくことになる。その為に東洋医学はきめ細かく患者の愁訴を聞いて分析して、フレキシブルに漢方を決定してゆく。